なぜベトナムでは仕事を細かく指示する必要があるのか?―現地責任者が実感した違いと対応策
- オフショア開発コンシェルジュ
- 8月5日
- 読了時間: 3分

はじめに
ベトナムでソフトウェア開発会社の責任者として業務を進める中で、日本との「仕事の進め方」の違いを日々実感しています。特に強く感じるのが、「仕事の完成度を高めるには、想像以上に細かくタスクを落とし込む必要がある」という点です。
本記事では、日本との仕事文化の違いを整理しながら、なぜタスクの細分化が必要になるのか、またその上で現地で成果を出すための具体的な対応策についてお伝えします。
なぜベトナムでは細かく指示する必要があるのか?
1. 前提や背景を推測する文化が育ちにくい
日本では「察する文化」が根強く、言語化されていなくても状況や相手の意図を汲み取ることが期待されます。一方、ベトナムでは「言われたことをやる」「自分の責任範囲を守る」ことを重視する文化がベースにあります。
そのため、「暗黙の了解」や「行間を読む」ことを期待すると、意図した通りのアウトプットが出てこないことが多々あります。
2. 職務領域が明確なJob型文化
ベトナムの多くの人材は、明確に与えられた役割(Job Description)に基づいて動く傾向があります。そのため、タスクの背景や全体像を把握した上で自ら判断し補完する、という日本的な働き方には馴染みがない場合があります。
3. 経験や教育のギャップ
日本ではOJTやチーム内レビューの文化が長く根付いており、若手も“完成度”の感覚を自然と身につける機会があります。しかし、ベトナムでは成長中の経済環境の中で個々の経験や教育レベルにばらつきがあるため、完成度の基準や「プロフェッショナルとしてのこだわり」にはギャップがあると感じることもあります。
対応策:完成度を高めるためのマネジメント実践
1. タスクを徹底的に分解し、目的も明記する
「何をするか」だけでなく、「なぜやるのか」「どのレベルまでやるのか」を明確に伝える
タスク分解は最初の2〜3ヶ月は過剰なくらい細かくするのが◎(慣れてきたら徐々に省略)
例:「画面設計書を作成」ではなく、「ユーザー視点で操作の流れを整理し、5画面分のワイヤーフレームを作成。仮の文言も含めてNotionに記載する」
2. レビューとフィードバックを定期化する
成果物レビューを「完成後」ではなく「途中経過」でも実施
よかった点・改善点を明確にフィードバックして、期待値を共有する
特に良いアウトプットは社内で「良い事例」としてシェアすると文化形成に繋がる
3. 「考え方」もセットで伝える
タスクの背後にある思考プロセスを教えることで、徐々に判断力や完成度が上がる
単にやり方を教えるのではなく、「なぜこう考えるか」「どういう基準で選ぶか」も共有
4. ドキュメント+会話のハイブリッド
口頭説明だけでは伝わりきらない部分があるため、ドキュメント(Notion/Google Docsなど)と合わせて指示・情報共有
逆に、文面だけでは誤解される可能性もあるので、重要事項は対話や1on1で補足
おわりに
「日本よりも細かく仕事を落とし込む必要がある」というのは、現地でマネジメントを経験する中で多くの方が感じる共通の課題です。ですが、適切に背景や考え方を伝え、指示とフィードバックを地道に積み重ねていくことで、現地メンバーの自律性も着実に育っていきます。
カルチャーや働き方の違いを“障壁”と捉えるのではなく、“前提条件”として理解した上で、適応したマネジメントを実践することが、グローバルなチームで成果を上げる鍵だと感じています。
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